瞑想に必要なのは、静かな場所と数分の時間だけです。
山にこもる修行や特別な信仰がなくても、椅子に座って呼吸を感じることから始められます。
一方で、瞑想の効果については「脳が変わる」「何でもよくなる」といった大きな話も目につきます。
この記事では、瞑想の意味と基本のやり方に加えて、研究でどこまでわかっているのかを、言いすぎずにまとめました。
効果を感じるまでの期間や、続けるときにつまずきやすい点もあわせて紹介します。
この記事でわかること
- 瞑想の意味と語源、宗教との違いがわかる
- 初心者向けの基本の呼吸瞑想のやり方がわかる
- 瞑想の効果について、研究でわかっていることとわかっていないことがわかる
- 効果を感じるまでの期間の目安と、続けるコツがわかる
- 「雑念が止まらない」「眠くなる」などの悩みへの対処法がわかる
## 瞑想とは:意味をシンプルに説明する
「瞑想」という言葉は知っていても、何をするものかを説明しようとすると意外に難しいもの。
まずは言葉の意味と、瞑想の本質から見ていきます。
### 語源と英語の意味(meditation)
瞑想は英語で「meditation(メディテーション)」といいます。
ラテン語の「meditari(考える、熟考する、練習する)」が語源です。
日本語の「瞑想」は「目を閉じて想う」と書きます。
外に向いている意識を、静かに内側へ向けることを表した言葉といえるでしょう。
### 一言でいえば「意識を今ここに向けること」
瞑想の本質を一言で表すなら、「意識を今ここに向けること」です。
私たちの心は、放っておくと過去の後悔や先の心配へと漂っていきます。
「あのとき、ああすればよかった」「明日のことが気がかり」。
こうした考えごとは、気づかないうちに心のエネルギーを使っています。
瞑想は、漂っていく意識を「今この瞬間」に戻す練習です。
呼吸や体の感覚など、いま実際に起きていることに注意を向けるのが基本になります。
### 宗教・スピリチュアルとの違い
瞑想の多くは、仏教やヒンドゥー教などの修行の中で受け継がれてきました。
そのため「宗教的なもの」という印象を持つ方も少なくありません。
ただ、いま医療や研究の場で使われている瞑想は、宗教の要素を外した形がほとんどです。
代表的なのが、ジョン・カバットジン博士が1979年にマサチューセッツ大学医学部で始めた「マインドフルネスストレス低減法(MBSR)」(
マサチューセッツ大学医学部のニュース記事)。
信仰を持っていてもいなくても、誰でも取り入れられます。
## 瞑想を始める前に知っておきたいこと
初めて瞑想をするときは、思い込みがあると続けにくくなります。
始める前に知っておくと気が楽になることを、3つ挙げておきましょう。
### 「頭を空っぽにする」必要はない
瞑想に関するいちばん大きな誤解は、「何も考えない状態にならなければいけない」というもの。
頭を空っぽにしようとすると、できない自分に焦ってしまいます。
瞑想の目的は、考えを消すことではありません。
考えが浮かんだことに気づいて、また呼吸に戻る。
この繰り返しそのものが、瞑想の練習です。
### 瞑想と睡眠・ぼーっとする時間の違い
「眠るのと何が違うの?」と感じる方もいるでしょう。
睡眠は、意識がない状態で脳と体を休ませる時間です。
ぼーっとする時間は、意識はあっても、特に注意を向ける先がありません。
瞑想は「いま、ここに注意を向ける」という意図を持って行う点が違います。
静かに過ごすところは似ていても、意識の向け方が異なるのです。
### 瞑想にはいくつかの種類がある
瞑想には、大きく分けて2つの方向があります。
呼吸など1つの対象に注意を集める「集中型」と、浮かんでくる考えや感覚をそのまま観察する「観察型」です。
この記事で紹介する呼吸瞑想は、両方の要素をあわせ持つ、いちばん基本的なやり方。
瞑想と、最近よく聞くマインドフルネスとの関係は、[マインドフルネスとは?意味・やり方・瞑想との違いを初心者向けにやさしく解説](https://yukkurira.jp/meditation_mindfulness/)でくわしく整理しています。
## 初心者向け:基本の呼吸瞑想のやり方
ここからは、道具も特別な環境もいらない、基本の呼吸瞑想を紹介します。
今日から1分だけ試してみてください。
### 必要なのは椅子1つだけ
座れる椅子か床、そして少しのあいだ静かにいられる場所があれば十分です。
専用のクッションやアプリ、音楽はなくてもかまいません。
アプリの誘導音声は助けになりますが、必須ではないもの。
「準備が整ってから」ではなく、「今日1分だけ」のほうが始めやすいでしょう。
### 基本の呼吸瞑想・5ステップ
**ステップ1:姿勢を整える**
椅子に座るか、床にあぐらをかきます。
背筋を自然に伸ばして肩の力を抜き、手は太ももの上に置きましょう。
**ステップ2:目を軽く閉じる**
完全に閉じても、少し開けてもかまいません。
開けておく場合は、視線を斜め下に落とします。
**ステップ3:呼吸を感じる**
鼻から息が入り、また出ていく感覚に注意を向けます。
息の温度や、お腹がふくらんだりへこんだりする動きを、そのまま感じてください。
**ステップ4:考えごとに気づいたら、呼吸に戻る**
考えが浮かぶのは自然なことです。
「考えていたな」と気づいたら、そっと呼吸へ注意を戻します。
何度戻ってもかまいません。
**ステップ5:ゆっくり目を開ける**
時間が来たら、ゆっくり目を開けます。
すぐに動き出さず、少しのあいだ体の感じを確かめてから終えましょう。
### 最初は1〜3分から始める
最初から長い時間を目指すと、続かなくなりがちです。
最初の1週間は1〜3分で十分。
慣れてきたら、5分、10分と少しずつ延ばしていきます。
呼吸が浅く感じるときは、お腹を使ったゆっくりした呼吸から入ると落ち着きやすくなります。
やり方は[腹式呼吸の正しいやり方:うまくできないときのコツと、呼吸が浅いときの整え方](https://yukkurira.jp/abdominal-breathing/)で紹介しています。
## 瞑想の効果:研究でわかっていること
瞑想の効果については、海外を中心に多くの研究が行われてきました。
ここでは、信頼できる研究機関の報告から、わかっていることと、まだはっきりしないことを分けて紹介します。
### 8週間の瞑想で脳に変化が見られた研究
よく知られているのが、ハーバード大学に関わる研究チームが2011年に発表した研究です(
ハーバード・ガゼットの記事)。
8週間のMBSRプログラムに参加した16人の脳をMRIで調べたところ、学習や記憶に関わる「海馬」の灰白質の密度が高まっていました。
不安やストレスに関わる「扁桃体」では、灰白質の密度が下がっていたと報告されています。
この変化は、参加者自身が感じたストレスの減り方とも関連していました。
瞑想をしなかった比較のグループには、同じ変化は見られなかったそうです。
ただし、参加者は16人と少人数でした。
「瞑想をすれば誰でも脳がこう変わる」と言い切れる段階ではないことも、知っておきたい点です。
### 不安や落ち込みをやわらげる効果
より多くの研究をまとめた分析もあります。
47の試験(参加者3,515人)を分析した2014年の研究では、マインドフルネス瞑想のプログラムに、不安・落ち込み・痛みを中程度やわらげる効果が見られました(
PubMedに掲載された論文の要旨)。
一方で、同じ分析では、薬や運動などほかの方法より効果が高いという証拠は見つかっていません。
瞑想は、ほかのケアと並ぶ選択肢の1つと考えるのがよさそうです。
### 睡眠への効果
アメリカの国立補完統合衛生センター(NCCIH)は、マインドフルネス瞑想が不眠をやわらげ、睡眠の質を高める可能性があるとまとめています(
NCCIH「瞑想とマインドフルネスについて知っておきたい8つのこと」)。
ただ、先ほどの2014年の分析では、睡眠への効果を示す証拠は十分ではないとされていました。
研究によって結果が分かれている、というのが今のところの正直な答えです。
寝る前に気持ちを落ち着かせる習慣の1つとして取り入れるのは、よい方法でしょう。
寝つけない夜にできることは、[眠れないときの対処法|寝れない夜にすぐ試せる方法と、寝つきが悪くなる原因](https://yukkurira.jp/cant-sleep/)にまとめています。
### 瞑想で気をつけたいこと
瞑想は、一般にはリスクの低い方法と考えられています。
それでも、まれに合わない人がいることもわかってきました。
NCCIHによると、6,000人以上を対象にした分析では、約8%の人が不安や落ち込みなどのよくない体験を報告していました。
瞑想中に気分が悪くなったり、つらい記憶がよみがえったりしたときは、無理に続けずに中断してください。
また、瞑想は治療の代わりにはなりません。
気分の落ち込みや不安が2週間以上続く、眠れない日が続くといったときは、医療機関や専門家に相談しましょう。
## 効果を感じるまでの期間と、続けるコツ
「いつごろから効果を感じられるの?」は、多くの方が気になるところ。
研究の内容をもとに、期間の目安と続けるコツを紹介します。
### 「8週間」という数字の意味
先ほどの脳の研究で使われたMBSRは、8週間のプログラムです。
参加者は、1日平均27分ほど瞑想を練習していました。
つまり「8週間」は、毎日まとまった時間をかけたうえで変化が観察された期間です。
「8週間続ければ必ず効果が出る」という保証ではありません。
1日数分から始める場合は、もう少しゆっくり変化が現れると考えておくと焦らずにすみます。
### 長さより、毎日少しずつ
実感の仕方には個人差があります。
「少し気持ちが落ち着く」「イライラしたときに一呼吸おける」といった小さな変化から気づく人が多いでしょう。
続けるコツは、完璧を目指さないこと。
「1分だけでもいい」「座るだけでもいい」と最小の単位を決めておくと、忙しい日にも途切れにくくなります。
できなかった日があっても、次の日からまた始めれば大丈夫です。
### 時間帯と場所を決めておく
毎日同じ時間、同じ場所で行うと、習慣になりやすくなります。
朝起きてすぐ、昼休みの数分、寝る前など、生活の中で無理のない時間を選んでみてください。
朝は頭がまだ静かで、考えごとが少ないと感じる人もいます。
夜に行うと眠くなりやすいので、眠りに入るための時間と割り切って使うのも1つの方法です。
## よくある悩みと対処法
瞑想を始めた人がつまずきやすいポイントは、だいたい共通しています。
代表的な3つの悩みと、その対処法を見ていきましょう。
### 「雑念が止まらない」は失敗ではない
「頭の中がうるさくて瞑想にならない」という声は、とても多いもの。
でも、考えが浮かぶこと自体は失敗ではありません。
大切なのは、浮かんだことに気づいて、呼吸に戻ることです。
「また考えてしまった」ではなく「気づけた」と受け取ってみてください。
その気づきの積み重ねが、瞑想の練習になります。
### 眠くなってしまう
目を閉じて力を抜くと、眠くなるのは自然な反応です。
目を少し開けたまま行う、背筋をいつもより少し伸ばす、といった工夫で眠気は起きにくくなります。
食後や寝不足の日は、特に眠くなりがちです。
時間帯を朝に変えてみるのもよいでしょう。
### 「効果がない」と感じたとき
瞑想の変化は、たいてい静かに、少しずつ現れます。
劇的な変化や特別な体験を期待していると、「何も起きない」と感じやすくなるかもしれません。
しばらく続けてもしっくりこないときは、やり方を変えてみるのも1つの手。
歩きながら足の裏の感覚に注意を向ける「歩く瞑想」や、体の各部分に順番に意識を向ける方法など、瞑想にはいろいろな形があります。
## よくある質問
**Q. 瞑想は宗教ですか?信仰が必要ですか?**
A. 瞑想の多くは宗教の修行の中で受け継がれてきましたが、医療や研究の場で使われている瞑想は、宗教の要素を外した形です。
信仰を持っていなくても、誰でも取り入れられます。
**Q. 1日に何分くらい瞑想すればいいですか?**
A. 最初は1〜3分で十分です。
慣れてきたら、5〜15分を目安に少しずつ延ばしてみてください。
長さよりも、毎日続けることのほうが大切です。
**Q. 寝ながら瞑想してもいいですか?**
A. 仰向けのまま呼吸を感じることはできますし、寝る前のリラックスとして取り入れるのもよい方法です。
ただ、眠ってしまいやすいので、目を覚ました状態で練習したいときは座って行いましょう。
**Q. 薬を飲んでいたり、通院したりしていても瞑想してよいですか?**
A. 瞑想は治療の代わりではなく、セルフケアの1つです。
心の不調で治療を受けている方は、始める前に主治医に相談すると安心です。
## まとめ:瞑想は、今ここに戻る小さな練習
この記事について、あらためて整理します。
**この記事のまとめ:**
– 瞑想とは「意識を今ここに向けること」で、宗教や信仰がなくても実践できる
– 道具はいらず、1〜3分の呼吸瞑想から始められる
– 考えが浮かぶのは失敗ではなく、「気づいて戻る」ことそのものが練習になる
– 研究では、脳の変化や、不安・落ち込みをやわらげる効果が報告されている一方、まだはっきりしないこともある
– 「8週間」は目安であり、長さよりも毎日少しずつ続けることが大切
– つらい気持ちが続くときは、瞑想だけで抱えずに専門家に相談する
瞑想は、特別な人のための特別な時間ではありません。
慌ただしい毎日の中で、いまの自分に戻ってくるための、ほんの数分の習慣です。
今日、目を閉じて3回だけ呼吸を感じてみてください。
そこから、瞑想は始まっています。
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