睡眠で休養がとれていると感じている人は、20〜59歳では70.4%。
厚生労働省の健康日本21(第三次)の資料に載っている、令和元年の数字です。
働き盛りの世代の、およそ3人に1人が「寝ても休まった気がしない」ということになります。
睡眠時間を増やすのが難しくても、眠りの質は毎日の小さな習慣で変えられます。
この記事では、厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」をもとに、睡眠の質を高める生活習慣と寝室の整え方をやさしく解説します。
- 睡眠の質とは何か、自分の睡眠の質を確かめる方法がわかる
- 厚生労働省のガイドがすすめる、睡眠の質を高める生活習慣がわかる
- 入浴のタイミングや照明など、寝る前の過ごし方のコツがわかる
- 光・音・温度など、眠りやすい寝室の目安がわかる
- 年齢や体の変化に合わせた工夫と、医療機関に相談する目安がわかる
睡眠の質とは?「よく眠れた」の正体
睡眠の質を高める前に、まずは「質のよい睡眠」とはどういうものかを確認しておきましょう。
目安がわかると、自分の眠りのどこを見直せばいいかが見えてきます。
睡眠の質は「睡眠休養感」で確かめる
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、睡眠の質を表す指標として「睡眠休養感」を大切にしています。
睡眠休養感とは、朝起きたときに「よく休めた」と感じられる感覚のこと。
特別な機械がなくても、自分で確かめられる物差しです。
何時間眠ったかよりも、朝の体と心がどう感じているか。
睡眠の質を考えるときは、まずそこに目を向けてみてください。
寝入りばなの深い眠りが、質を左右する
眠りには、体を休める深い眠りと、夢を見ることが多い浅い眠りがあり、ひと晩のうちに何度かくり返されます。
なかでも深い眠りが多く現れるのは、眠りについてから最初の数時間です。
寝入りばなにしっかり深く眠れると、朝の休まった感覚につながりやすくなります。
この記事で紹介する習慣の多くは、この「最初の深い眠り」を引き出すためのものです。
睡眠の質が下がっているサイン
次のような状態が続いているなら、睡眠の質が下がっているのかもしれません。
- 朝起きても疲れが残っている
- 夜中に何度も目が覚める
- 日中に強い眠気がある
- 休日に平日より大幅に長く寝てしまう
疲れが抜けにくい状態が続くときは、睡眠だけでなく生活全体を見直すことも大切です。
年代による体の変化については、50代が疲れやすくなる原因と対策:女性・男性別の変化とセルフケアの方法でも詳しく紹介しています。
厚生労働省のガイドに沿った、睡眠の質を高める生活習慣
睡眠の質は、夜だけで決まるものではありません。
朝から夜までの過ごし方が、少しずつ眠りの準備をしています。
朝の光と朝食で、体内時計を整える
睡眠ガイド2023の本文では、太陽の光が、眠りと目覚めのリズムにもっとも強い影響を与えるとされています。
朝起きたらカーテンを開けて、光を浴びるところから一日を始めましょう。
あわせて大切にしたいのが朝食です。
ガイドでは、朝食を抜く習慣が、眠りと目覚めのリズムを後ろにずらしてしまうと報告されています。
軽いものでいいので、朝に何か口に入れることが、夜の眠りの準備になります。
日中に体を動かす
睡眠ガイド2023では、運動は一日のどの時間帯に行っても、睡眠の質を高めるとされています。
ウォーキングや家事、階段の上り下りなど、体を動かす時間を毎日の中に少しずつ増やしていきましょう。
ただし、寝る前1時間以内の激しい運動は、かえって眠りの質を下げるおそれがあります。
夜に体を動かすなら、ゆったりしたストレッチ程度にとどめておくと安心です。
夕食は寝る直前を避ける
睡眠ガイド2023では、寝る直前の夕食や夜食が、睡眠休養感を下げる原因のひとつに挙げられています。
食べてすぐ横になると、体は消化のために働き続け、眠りが浅くなりがちです。
塩分のとりすぎにも気をつけたいところ。
ガイドでは、塩分が多いと夜中にトイレに起きる回数が増え、眠りが途切れやすくなるとされています。
カフェイン・お酒・たばこと上手に付き合う
睡眠ガイド2023では、カフェインやニコチン、寝酒が、寝つきを悪くしたり、夜中に目が覚める原因になったりすると注意をうながしています。
コーヒーや緑茶は午後の早い時間までにして、夕方以降はノンカフェインの飲み物に切り替えるのがおすすめです。
お酒は寝つきをよくするように感じても、眠りを浅くしてしまうもの。
眠るための寝酒は、習慣にしないようにしましょう。
寝つけない夜の過ごし方は、眠れないときの対処法|寝れない夜にすぐ試せる方法と、寝つきが悪くなる原因で紹介しています。
寝る前の過ごし方で、眠りを深くする
寝る前の1〜2時間は、体と心を眠りに向けて切り替えていく時間です。
ここでは、今夜から取り入れられる3つの工夫を紹介します。
入浴は寝る1〜2時間前に、40℃前後のお湯で
お風呂のタイミングは、眠りの質に関わります。
2019年に発表された研究のまとめ(メタ解析)では、寝る1〜2時間前に40〜42.5℃ほどのお湯で入浴やシャワーをすると、寝つくまでの時間が短くなり、睡眠の質もよくなることが示されています。
温まった体から熱が逃げていくときに、体の深いところの温度が下がり、自然と眠気が訪れます。
寝る直前に熱いお湯に入ると、かえって目がさえてしまうので注意しましょう。
照明を落とし、スマートフォンは寝室の外へ
明るい光は、眠りを誘うホルモンの働きを妨げます。
寝る1時間ほど前からは、部屋の照明を少し落として、暖かみのある色の明かりで過ごしてみてください。
スマートフォンやタブレットも、寝る前は手放したいもの。
睡眠ガイド2023では、寝そべって画面を見ると、目と画面の距離が近くなり、ブルーライトを浴びやすくなるとされています。
寝室には持ち込まず、別の部屋で充電するのがいちばん確実です。
呼吸と瞑想で、心と体をゆるめる
布団に入ったら、ゆっくり息を吐くことを意識してみましょう。
鼻から静かに吸って、口から長く吐く。
それをくり返すだけで、体の力が少しずつ抜けていきます。
その日の考えごとが頭に残っているときは、呼吸に意識を向ける短い瞑想もおすすめです。
浮かんでくる考えを追いかけず、ただ呼吸を感じていると、心が自然と静まっていきます。
眠りやすい寝室環境の整え方
同じ時間眠っても、寝室の環境によって眠りの深さは変わります。
光・音・温度の3つについて、目安を確認しておきましょう。
光:寝る前は30ルクス以下のやわらかい明かりに
長寿科学振興財団の「健康長寿ネット」によると、眠りにつく前は30ルクス以下の暗めで、赤みを帯びたやわらかい光がよいとされています。
ふだんのリビングの照明よりも、ぐっと暗めの明るさです。
眠っているあいだは、できるだけ暗くするのが基本。
豆電球をつけたまま眠る習慣がある人は、足元だけを照らすフットライトに替えるなどの工夫をしてみてください。
音:40デシベル以下の静かな環境を
健康長寿ネットでは、眠っているあいだの音は40デシベル以下が望ましいとされています。
40デシベルは、図書館の中くらいの静けさです。
テレビやラジオをつけたまま眠ると、眠りが浅くなりやすくなります。
外の音が気になるときは、厚手のカーテンや耳栓を試してみるのもよいでしょう。
温度・湿度:寝床の中は33℃前後、湿度50%前後
健康長寿ネットによると、布団の中の環境は温度33℃前後、湿度50%前後が眠りやすいとされています。
部屋の温度そのものより、布団の中が快適かどうかがポイントです。
夏はエアコンを上手に使い、冬は掛け布団や寝間着で調整しましょう。
暑すぎても寒すぎても、夜中に目が覚める原因になります。
年齢や体の変化に合わせた工夫
眠りの質は、年齢や体の変化によっても変わっていきます。
今の自分に合ったやり方を選ぶことが、無理なく続けるコツです。
年齢とともに眠りが浅くなるのは自然なこと
年齢を重ねると、深い眠りが減り、夜中や明け方に目が覚めやすくなります。
若いころと同じように眠れなくなっても、それは多くの場合、自然な変化です。
大切なのは、若いころの眠りを取り戻そうと焦らないこと。
年代ごとの睡眠時間の目安は、理想の睡眠時間は何時間?年齢別の目安と、自分に合う長さの見つけ方で詳しく解説しています。
寝床で過ごす時間を長くしすぎない
睡眠ガイド2023では、高齢の人に向けて、寝床にいる時間が8時間以上にならないようにすることがすすめられています。
眠くないのに早くから布団に入ると、眠れない時間が長くなり、かえって眠りが浅くなってしまいます。
眠くなってから布団に入り、毎朝同じ時刻に起きる。
このリズムを守ることが、眠りの質を保つ近道です。
更年期のほてりや寝汗には、寝具と室温で対応する
40〜50代の女性は、更年期のホルモンの変化で、夜中にほてりや寝汗が出て目が覚めることがあります。
汗を吸いやすい綿などの寝間着を選び、掛け布団を調整しやすいように薄手のものを重ねておくと、夜中の不快感をやわらげられます。
つらい症状が続くときは、ひとりで我慢せず、婦人科で相談してみてください。
睡眠の質が上がらないときは、医療機関に相談を
生活習慣を見直しても眠りの質が上がらないときは、睡眠の病気が隠れていることもあります。
次のようなサインがあれば、早めに医療機関に相談しましょう。
いびきや、眠っているあいだの呼吸の停止
大きないびきをかく、眠っているあいだに呼吸が止まっていると言われる。
こうした場合は、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。
しっかり眠っているつもりでも、眠りが何度も途切れているため、日中に強い眠気が出やすくなる病気です。
放っておかずに、睡眠外来や呼吸器内科などで相談してください。
眠れない日が週3日以上、3か月以上続く
厚生労働省のe-ヘルスネット「不眠症」によると、眠れないことと日中の不調が週3日以上あり、それが3か月以上続く場合は、慢性の不眠症とされています。
気分の落ち込みが続いていたり、日中の生活に支障が出ていたりするときも、相談の目安になります。
かかりつけ医のほか、精神科や心療内科、睡眠外来などで相談できます。
よくある質問
Q. 睡眠時間が短くても、質がよければ大丈夫ですか?
A. 睡眠の質を高めることは大切ですが、時間が足りなければ十分に休めません。
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、大人は6時間以上が目安とされています。
質と時間の両方を意識してみてください。
Q. 睡眠の質を高めるために、食べたほうがいいものはありますか?
A. 特定の食べ物だけで眠りが劇的に変わることはありません。
まずは朝食をとること、夕食を寝る直前に食べないこと、夕方以降のカフェインを控えることを意識しましょう。
食事のリズムを整えることが、眠りの質を整える土台になります。
Q. スマートウォッチの睡眠スコアは気にしたほうがいいですか?
A. 眠りの傾向をつかむ参考にはなりますが、数字に一喜一憂しすぎる必要はありません。
いちばん大切なのは、朝起きたときに「よく休めた」と感じられるかどうかです。
スコアが気になって眠れなくなるようなら、しばらく見るのをやめてもかまいません。
Q. 寝る前のストレッチは効果がありますか?
A. ゆったりとしたストレッチは、体の緊張をほぐして、眠りに入りやすくしてくれます。
ただし、息が上がるような激しい運動は、寝る1時間前までに済ませておきましょう。
まとめ:睡眠の質は、毎日の小さな習慣で高められる
この記事について、あらためて整理します。
この記事のまとめ:
- 睡眠の質は、朝起きたときの「よく休めた」という感覚(睡眠休養感)で確かめる
- 朝の光と朝食、日中の運動で、体内時計のリズムを整える
- 夕食は寝る直前を避け、夕方以降のカフェインと寝酒を控える
- 入浴は寝る1〜2時間前に40℃前後のお湯で、寝る前は照明を落としてスマートフォンを手放す
- 寝室は暗く静かにし、布団の中を温度33℃前後・湿度50%前後に保つ
- いびきや呼吸の停止、長く続く不眠があるときは、医療機関に相談する
眠りの質は、特別な道具がなくても、毎日の過ごし方で少しずつ変えていけます。
全部を一度に取り入れなくても大丈夫。
今夜はまず、寝る前の照明をひとつ落とすところから始めてみてください。
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