ふだんは1分間に約15回、画面を見ているあいだは約5〜7回。
これは、米国眼科学会(AAO)が紹介している、まばたきの回数です。
まばたきが半分以下になれば目の表面は乾きやすくなり、ピントを合わせる筋肉も休む間がありません。
夕方になると目の奥が重くなり、肩や頭までどんよりしてくることも。
ひと晩眠っても重さが抜けきらないなら、それはただの「疲れ目」ではなく「眼精疲労」なのかもしれません。
この記事では、眼精疲労と目の疲れの違い、症状と原因、今すぐできるケア、毎日の習慣での治し方までを、眼科の専門団体や国のガイドラインをもとにまとめました。
画面の前で過ごす時間が長い方ほど、目をゆるめる時間をつくってみてください。
- 眼精疲労と「目の疲れ(疲れ目)」の違いと、主な症状がわかる
- 眼精疲労が起こる原因がわかる
- 目の疲れを今すぐ取る方法と、ツボの押し方がわかる
- 画面との距離や休憩の取り方など、毎日の習慣での治し方がわかる
- 眼科を受診したほうがよい症状の目安がわかる
眼精疲労とは?「目の疲れ」との違いと主な症状
「目が疲れた」と「眼精疲労」は、似ているようで少し意味が違います。
まずは、その違いと症状を整理しておきましょう。
目の疲れ(疲れ目)と眼精疲労の違い
目を使ったあとの一時的な疲れは、一般に「疲れ目」や「目の疲れ」と呼ばれます。
少し目を閉じたり、ひと晩ぐっすり眠ったりすれば、自然と楽になるのが特徴です。
一方の眼精疲労は、休んでも疲れが取れず、目の不調が体全体にまで広がっている状態を指します。
日本眼科医会の「屈折異常と眼精疲労」でも、目を使いすぎることで疲れが全身に及んだ状態として説明されています。
「眠っても抜けない」「目だけでなく肩や頭もつらい」と感じたら、眼精疲労を疑ってみてください。
眼精疲労の主な症状
眼精疲労の症状は、目だけにとどまりません。
日本眼科医会の「パソコンと目」では、パソコン作業による不調を次の3つに分けて紹介しています。
- 目の症状:かすむ、重い、痛い、まぶしい、涙が出る、充血する、乾く、ものが二重に見える
- 体の症状:首や肩のこり、腰のだるさ、頭痛、吐き気
- こころの症状:イライラ、不安感、憂うつ感
目の疲れが肩こりや頭痛を呼び、気分の落ち込みにまでつながっていくこともあるもの。
長引く肩こりや頭痛のかげに、実は目の疲れが隠れていた、ということも珍しくありません。
休んでも抜けない疲れはサインのひとつ
日本眼科医会の「パソコンと目」では、目の疲れを放っておくと全身の症状につながるため、睡眠をとっても疲れが残るときは注意が必要だとしています。
「少し休めば大丈夫」と様子を見ているうちに、疲れが積み重なっていくことも。
朝起きた時点で目が重い、週末に休んでも楽にならない、という日が続いているなら、目の使い方や環境を見直すタイミングと考えてみてください。
眼精疲労が起こる原因
眼精疲労は、ひとつの原因だけで起こるとは限りません。
いくつかの要因が重なり、目の負担が回復を上回ったときに起こりやすくなります。
目の使い方・目の状態・体の状態のバランスが崩れる
日本眼科医会の「屈折異常と眼精疲労」では、眼精疲労を「目の使用」「目の能力」「耐える力」の3つのバランスが崩れたときに起こるものとして説明しています。
目を使いすぎていること、眼鏡が合わないなどで見る力が落ちていること、病気などで耐える力が弱っていること。
こうした条件が重なるほど、疲れは抜けにくくなるわけです。
治療でも、まずはどこでバランスが崩れているのかを見つけることが第一歩とされています。
目薬やマッサージだけで終わらせず、原因に目を向けることが大切でしょう。
画面を見続ける生活とまばたきの減少
パソコンやスマホの画面を見つめていると、まばたきの回数が減り、涙が蒸発しやすくなります。
さらに近くの一点にピントを合わせ続けることで、目のなかの筋肉はずっと緊張したまま。
同じ姿勢で座り続けるため、首や肩、腰にも疲れがたまっていきます。
日本眼科医会の「パソコンと目」では、画面のちらつきや光の映り込みも目への刺激になると説明されています。
仕事でもプライベートでも画面を見る時間が長い今の暮らしは、目にとって休む間の少ない環境といえるでしょう。
合わない眼鏡や、年齢による見え方の変化
度数が合っていない眼鏡やコンタクトレンズも、眼精疲労の大きな原因になります。
日本眼科医会によると、遠視の人は遠くを見るときもピント合わせを続けているため、裸眼の視力がよくても疲れやすいのだそう。
近視の人が遠くに合わせた眼鏡のまま手元の作業を続けると、強いピント合わせが必要になることも説明されています。
40代を過ぎると、手元のピントが合いにくくなる老眼(老視)も始まります。
「夕方になると小さな字が読みにくい」と感じたら、眼鏡の度数が今の目に合っているかを確かめてみるとよいでしょう。
ドライアイ・ストレス・病気が隠れていることも
目の乾きも、眼精疲労と深く関わっています。
日本眼科医会の「ドライアイに悩む方へ」では、エアコン・コンタクトレンズ・コンピュータという「3つのコン」が、ドライアイを悪くする要因として挙げられています。
女性は男性より約2倍なりやすく、年齢とともに増えるとされているのも気になるところ。
ストレスで交感神経が優位な状態が続くと、涙が出にくくなることもあります。
また、緑内障や糖尿病などの病気が、目の疲れやすさの背景にある場合も。
セルフケアで楽にならないときは、自己判断せずに眼科で原因を調べてもらうことが大切です。
目の疲れを今すぐ取る方法:その場でできる4つのケア
画面の前で「目が疲れたな」と感じたら、その場でできる小さなケアから始めてみましょう。
どれも、道具はほとんどいりません。
目を閉じる・遠くを眺める
いちばん手軽なのは、画面から目を離して、目を休ませることです。
米国眼科学会(AAO)の発表では、20分ごとに20秒ほど、手元の作業から目を離す休憩がすすめられています。
海外では「20分ごとに、約6メートル先を、20秒眺める」という「20-20-20ルール」としても知られる方法。
窓の外を眺めたり、そっと目を閉じたりするだけでも、ピントを合わせる筋肉の緊張はゆるんでいきます。
20秒であれば、仕事の手を大きく止める必要はありません。
タイマーをセットしたり、メールを1通送るごとに遠くを見ると決めたりすると、習慣にしやすくなるはずです。
蒸しタオルで目を温める
目の疲れや乾きを感じるときは、まぶたの上から目を温めてみてください。
日本眼科医会の「ドライアイに悩む方へ」によると、目を温めるとまぶたの縁にあるマイボーム腺から油分が出やすくなり、ドライアイの治療にも役立つそうです。
蒸しタオルは、水でぬらして固くしぼったタオルを、電子レンジ(500〜600W)で30秒〜1分ほど温めれば作れます。
やけどをしないよう、手で触って温度を確かめてから、目を閉じてまぶたの上にのせましょう。
ただし、充血して熱っぽいときは、温めるより軽く冷やすほうが楽になることもあります。
冷やしすぎや温めすぎはどちらもよくないとされているので、「気持ちいい」と感じる程度を目安にしてみてください。
まばたきを意識する
冒頭でふれたように、画面を見ているあいだのまばたきは、ふだんの半分以下に減ってしまいます。
意識していないと、目の表面はどんどん乾いていくばかり。
ときどき、ぎゅっと目を閉じてから、ぱっと開いてみましょう。
これを数回くり返すだけでも、涙が目の表面に行きわたりやすくなります。
「まばたき」と書いた付せんをモニターの端に貼っておくのも、ひとつの工夫です。
目の疲れにいいといわれるツボ
東洋医学では、目のまわりや首の後ろに、目の疲れをやわらげるといわれるツボがあります。
効果の感じ方には個人差があり、医学的な治療の代わりになるものではありません。
それでも、指先でやさしく押すと、こわばった目のまわりがほっとゆるむ感覚を味わえるはずです。
- 睛明(せいめい):目頭と鼻のつけ根のあいだにある、小さなくぼみ
- 攅竹(さんちく):眉頭の内側にあるくぼみ
- 太陽(たいよう):眉尻と目尻のあいだから、少し耳側に寄ったこめかみのくぼみ
- 風池(ふうち):首の後ろ、髪の生え際にある2本の太い筋の外側のくぼみ
押すときは、息をゆっくり吐きながら3〜5秒ほど、「痛気持ちいい」と感じる強さで。
眼球そのものを押すのは避け、コンタクトレンズはあらかじめ外しておきましょう。
眼精疲労の治し方:毎日の習慣で目の負担を減らす
その場のケアで楽になっても、同じ使い方を続けていれば、疲れはまた戻ってきます。
眼精疲労を根本から治していくには、目を使う環境と習慣を見直すことが近道です。
画面との距離・高さ・明るさを整える
厚生労働省「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」では、画面との距離はおおむね40cm以上を確保し、画面の上端は目の高さとほぼ同じか、やや下にするのが望ましいとしています。
日本眼科医会の「パソコンと目」で紹介されている目安は、40〜50cm。
ノートパソコンは画面が低くなりやすいので、台にのせて高さを調整するのもひとつの方法です。
画面の明るさと周りの明るさの差は、なるべく小さくするのが基本です。
暗い部屋で明るい画面だけを見ていると、目はそのギャップに疲れてしまいます。
窓や照明が画面に映り込む場合は、カーテンや画面の向きで調整してみてください。
1時間に1回は、目を休める時間をつくる
厚生労働省のガイドラインでは、1回の連続した作業が1時間を超えないようにし、次の作業までに10〜15分の休止時間を設けることが示されています。
さらに、その1時間のなかでも1〜2回の小休止を入れるよう求めています。
休止時間といっても、何もせずにじっとしている必要はありません。
立ち上がって飲み物を入れたり、ベランダで遠くを眺めたり、軽く肩を回したりと、画面から離れて体を動かすだけで十分です。
家で仕事をしていると区切りがあいまいになりやすいので、休憩もスケジュールに組みこんでおくと安心でしょう。
部屋の乾燥対策と、目薬の選び方
目の乾きを防ぐには、まず部屋の環境から整えましょう。
日本眼科医会の「パソコンと目」では、加湿器で乾燥を防ぐこと、エアコンの風が直接目に当たらないようにすることがすすめられています。
目薬を使うなら、防腐剤の入っていない人工涙液タイプを1日に数回さすのがひとつの方法です。
日本眼科医会の「ドライアイに悩む方へ」では、充血を取るだけの市販の目薬は副作用のほうが強いことが多いとして、避けるよう呼びかけています。
どれを選べばいいか迷うときは、薬局の薬剤師や眼科で相談してみてください。
眠りと食事で、目の回復力を支える
目の疲れを回復させるいちばんの時間は、やはり眠っているあいだです。
日本眼科医会の「パソコンと目」も、十分な睡眠と適度な休養、栄養バランスのとれた食事を心がけるよう伝えています。
自分に合った眠りの長さが気になる方は、理想の睡眠時間は何時間?年齢別の目安と、自分に合う長さの見つけ方も参考にしてみてください。
日本眼科医会の「ドライアイに悩む方へ」によると、目に特効薬のように効く食べものはなく、バランスのよい食事が基本とのこと。
寝る前のスマホを少し早めに手放すことも、目と眠りの両方をいたわる習慣になるでしょう。
眼科に行く目安:こんな症状は早めに受診を
目の疲れの多くはセルフケアで楽になりますが、なかには病気が隠れていることもあります。
「ただの疲れ目」と決めつけず、受診の目安を知っておきましょう。
セルフケアで楽にならないときは一度眼科へ
目を休めても楽にならない、疲れが何週間も続くというときは、一度眼科で相談してみてください。
日本眼科医会の「パソコンと目」では、違和感があれば放置せずに早めに受診すること、症状がなくても半年に一度ほど定期的に検査を受けることがすすめられています。
眼科では、視力や眼鏡の度数が合っているか、ドライアイがないか、目の奥に病気がないかなどを調べてもらえます。
眼鏡を作り直しただけで、長年の疲れがすっと軽くなることもあるもの。
すぐに受診したい目の症状
次のような症状があるときは、疲れ目と考えずに、早めに眼科を受診してください。
- 急に視力が落ちた、見え方がぼやけたまま戻らない
- 視野の一部が欠けて見える、ものがゆがんで見える
- 強い目の痛みや充血に、頭痛や吐き気をともなう
とくに目の痛み・充血・かすみに頭痛や吐き気が重なるときは、急性緑内障発作の可能性もあります。
長寿科学振興財団の健康長寿ネットでは、急性緑内障発作は一晩で失明する可能性もあるため、すぐに治療を受ける必要があると説明されています。
夜間や休日であっても、ためらわずに救急外来へ相談しましょう。
40代・50代からは「アイフレイル」にも目を向けて
40歳を過ぎると、年齢とともに目の働きは少しずつ衰えていきます。
日本眼科医会はこの状態を「アイフレイル」と呼び、老眼などの年齢による変化の裏に、緑内障や白内障などの病気が隠れていることもあると呼びかけています。
同会の調査では、40歳以上の8割以上が何らかの目の症状を感じていた一方で、検査やケアを受けていた人は約2割にとどまったそうです。
疲れやすさを「年のせい」とあきらめず、目の検査を受けるきっかけにしたいもの。
目だけでなく体全体が疲れやすくなったと感じている方は、50代が疲れやすくなる原因と対策:女性・男性別の変化とセルフケアの方法もあわせて読んでみてください。
目を休めることは、心をゆるめること
目の疲れと心の緊張は、思っている以上につながっています。
最後に、目を休める時間を「心をゆるめる時間」に変えるヒントを紹介します。
画面から離れる時間を、自分へのごほうびに
目を休めるのは、さぼることではありません。
ほんの数分でも画面を閉じ、温かい飲み物を手にひと息つく時間は、目にも心にもやさしいごほうびになります。
目を閉じて呼吸に意識を向けるだけで、頭のなかのざわつきが静まっていくのを感じられるでしょう。
「目を休める時間」を、一日のなかにいくつか予定として入れてみてください。
忙しい日ほど、その数分があとの集中力を支えてくれます。
遠くの緑を眺める時間を持つ
近くの画面ばかり見ている目にとって、遠くの景色を眺める時間はなによりの休息です。
窓の外の木々や空をぼんやり眺めるだけでも、目のピントはふっとゆるみます。
休日には、少し足をのばして緑の多い場所を歩いてみるのもおすすめ。
木々に囲まれてゆっくり過ごす時間については、森林浴とは?意味・効果・やり方・発祥をやさしく解説【アーシングとの相乗効果も】で詳しく紹介しています。
よくある質問
Q. ブルーライトカット眼鏡は眼精疲労に効きますか?
A. 現時点では、眼精疲労をやわらげる効果ははっきりしていません。
日本眼科学会や日本眼科医会など6団体の意見書では、ランダム化比較試験でブルーライトカット眼鏡に眼精疲労を減らす効果は認められなかったと紹介されています。
画面の光そのものより、長時間見続ける使い方のほうが目の負担になるため、こまめな休憩を優先しましょう。
Q. 目は温めるのと冷やすのと、どちらがいいですか?
A. 疲れや乾きを感じるときは温める、充血して熱っぽいときは軽く冷やす、と使い分けるのが目安です。
どちらの場合も、やりすぎは禁物。
心地よいと感じる温度と時間にとどめてください。
Q. 眼精疲労で頭痛や肩こりが起こることはありますか?
A. はい、起こることがあります。
眼精疲労の症状は目だけにとどまらず、首や肩のこり、頭痛、吐き気など、体にあらわれることも少なくありません。
ただし、強い頭痛や吐き気に目の痛みや見えにくさをともなう場合は、別の病気の可能性もあるため早めに受診してください。
Q. 目薬はたくさんさしたほうが効きますか?
A. いいえ、1回に1〜2滴で十分です。
日本眼科医会の「パソコンと目」では、さしたあとは目を閉じて薬を広げ、2種類の目薬を使うときは5分ほど間をあけるよう説明されています。
処方された目薬がある場合は、医師の指示どおりに使いましょう。
Q. 眼精疲労は自然に治りますか?
A. 原因が目の使いすぎだけなら、休憩や睡眠を見直すことで楽になっていくことが多いでしょう。
一方で、眼鏡が合っていない、ドライアイや病気が隠れているといった場合は、原因に向き合わないかぎり疲れはくり返します。
セルフケアを続けても変わらないときは、眼科で原因を調べてもらってください。
まとめ:目をゆるめる時間が、眼精疲労をやわらげる近道
この記事について、あらためて整理します。
この記事のまとめ:
- 眼精疲労は、休んでも疲れが抜けず、肩こりや頭痛など全身にまで不調が広がった状態
- 画面の見すぎ、まばたきの減少、合わない眼鏡、ドライアイ、ストレス、病気などが重なって起こる
- その場では、遠くを眺める・目を温める・まばたきを意識する・ツボを押すといったケアが手軽
- 根本から治すには、画面との距離や高さ、1時間ごとの休憩、部屋の乾燥対策、睡眠を見直す
- 急な見えにくさや視野の欠け、目の痛みに頭痛や吐き気をともなうときは、すぐに眼科へ
目の疲れは、毎日がんばっている証のようなものかもしれません。
だからこそ、ときどき画面から目を離して、まぶたの上にそっと手をあてる時間をつくってあげてください。
今日はまず、20分に一度、遠くを眺めることから。
その小さな休憩が、目と心をゆるめるはじまりになります。
▶[眠れないときの対処法|寝れない夜にすぐ試せる方法と、寝つきが悪くなる原因] では、寝つけない夜にすぐ試せる方法と、寝つきが悪くなる原因を紹介しています。
▶[瞑想とは何か?初心者でも3分でわかる意味・やり方・効果を完全解説] では、目を閉じて呼吸に意識を向ける瞑想の基本的なやり方を解説しています。
▶[東京で森林浴を楽しむ方法:都内・近郊のおすすめスポットとひとり時間の過ごし方] では、遠くの緑を眺めて目と心を休められる都内・近郊のスポットを紹介しています。

