布団に入って、もう1時間以上たったころ。時計を見ると、午前1時を過ぎています。
「早く寝ないと、明日がつらくなる」と思うほど目がさえて、寝返りの回数ばかりが増えていきます。
眠れない夜は、誰にでもあります。大切なのは、眠れないときに何をするかを、あらかじめ知っておくこと。
この記事では、寝床の中ですぐ試せる方法と、それでも寝れないときの過ごし方、寝つきが悪くなる原因と日中の整え方を、公的な情報をもとにやさしく解説します。
- 眠れないときに寝床の中ですぐ試せる対処法(米軍式睡眠法・4-7-8呼吸法など)がわかる
- どうしても寝れないときの、寝床の外での過ごし方がわかる
- 寝つきが悪くなる主な原因がわかる
- 眠れない夜を減らすための、日中の習慣がわかる
- 病院に相談したほうがよい不眠のサインがわかる
眠れない夜に、まず知っておきたいこと
対処法を試す前に、眠れない夜の受けとめ方を少しだけ変えておきましょう。
気持ちの持ち方ひとつで、寝つきやすさは変わります。
「眠らなきゃ」と焦るほど目がさえる
眠りは、がんばって手に入れるものではありません。
「早く寝なければ」と強く思うほど、頭と体は緊張して、かえって眠りから遠ざかってしまいます。
眠れない夜に必要なのは、眠ろうと努力することよりも、心と体の力を抜いていくことです。
眠れない夜がたまにあるのは自然なこと
心配ごとがある日や、旅行先、季節の変わり目などに眠れなくなるのは、誰にでも起こる自然な反応です。1日や2日眠れなかったからといって、すぐに体をこわすわけではありません。
「今夜は眠れなくても、横になって体を休めていれば大丈夫」と考えるだけでも、気持ちが少し楽になります。
寝れないときに寝床の中ですぐ試せる対処法
ここでは、布団に入ったまま試せる方法を紹介します。どれも道具はいりません。
今夜からひとつずつ試して、自分に合うものを見つけてみてください。
米軍式睡眠法で、体の力を順番に抜く
米軍式睡眠法は、第二次世界大戦中にアメリカ海軍の飛行士候補生のために考えられたといわれるリラックス法です。陸上競技のコーチでもあったバド・ウィンター氏が広めた方法で、6週間の練習で96%の人が2分以内に眠れるようになったと伝えられています。
ただし、この数字は科学的な研究で確かめられたものではないので、「体の力を抜く練習」として気軽に試すのがおすすめです。
やり方は次のとおりです。
- 目を閉じて、額・目のまわり・頬・あご・舌など、顔の力をすべて抜く
- 肩をストンと下ろし、片方ずつ腕の力を抜いていく
- 息をゆっくり吐きながら、胸の力を抜く
- 太もも、ふくらはぎ、足先の順に、脚の力を抜く
- 体がゆるんだら、10秒ほど頭の中を空っぽにする
頭を空っぽにするのが難しいときは、「穏やかな湖に浮かぶカヌーに寝そべって、青空を見上げている」といった、静かな景色を思い浮かべてみてください。
「何も考えない、何も考えない」と心の中でくり返すのもよいとされています。
4-7-8呼吸法で、息をゆっくり吐く
4-7-8呼吸法は、アメリカの医師アンドルー・ワイル氏が紹介している呼吸法です。
息を長く吐くことで、高ぶった気持ちを落ち着けていきます。
- 口を閉じて、鼻から4つ数えながら息を吸う
- 7つ数えるあいだ、息を止める
- 口から「フーッ」と8つ数えながら、息をすべて吐き切る
- これを4回くり返す
息を止めるのが苦しいときは、数を短くしてもかまいません。吸う時間より吐く時間を長くすることを意識するのがコツです。
力を入れてからゆるめる「筋弛緩法」
筋弛緩法は、体の一部にわざと力を入れてから、一気にゆるめるリラックス法です。
たとえば、両手をぎゅっと5秒ほど握りしめて、パッと手を開き、力が抜けていく感覚を10秒ほど味わいます。
同じように、肩をすくめてからストンと落とす、つま先を強く曲げてから伸ばす、というように、体の部分ごとにくり返していきます。
力を抜こうとしてもうまく抜けない人でも、いったん力を入れることで、ゆるんだ感覚がつかみやすくなります。
「眠ろうとしない」と決めてみる
意外に効果があるのが、あえて「今夜は眠らなくてもいい」と決めてしまう方法です。
目を閉じて横になり、「眠るためではなく、体を休めるために横になっている」と考えます。
眠ろうとする力みが消えると、気づかないうちに眠っていた、ということも少なくありません。
それでも寝れないときの対処法
布団の中で試しても眠れないときは、寝床の外に出てみましょう。
無理に横になり続けないことが、次の夜の眠りを守ることにもつながります。
思い切って、いったん寝床を離れる
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」でも、なかなか眠れないときは、いったん寝床を離れることがすすめられています。
眠れないまま寝床で過ごす夜が続くと、体が「寝床は眠れない場所」と覚えてしまうためです。
眠れないと感じたら、時計を何度も見るのはやめて、そっと寝床を出てみてください。
薄暗い部屋で、静かに過ごす
寝床を出たら、明るすぎない部屋で、静かに過ごします。
照明は手元が見える程度に落とし、テレビやスマートフォンは見ないようにしましょう。
紙の本をゆっくり読む、温かいノンカフェインの飲み物を少しずつ飲む、軽くストレッチをする、といった過ごし方がおすすめです。
眠気が戻ってきたら、寝床に戻ります。
頭の中の考えごとを紙に書き出す
考えごとが止まらなくて眠れないときは、頭の中にあることをそのまま紙に書き出してみてください。
明日やること、気になっていること、もやもやした気持ちなどを、きれいにまとめようとせずに書いていきます。
書き出すことで、「覚えておかなければ」という緊張がゆるみ、頭が少し静かになります。
何を書けばいいか迷うときは、ジャーナリングの書き方と例文「何を書けばいい?」に答える実践ガイドを参考にしてみてください。
寝つきが悪くなる原因
眠れない夜が続くときは、その背景にある原因を知っておくことも大切です。
原因がわかると、どこから整えればよいかが見えてきます。
ストレスや考えごと
寝つきの悪さでいちばん多いのが、ストレスや考えごとです。
心配ごとがあると、体は緊張したままで、眠りに入るための準備がなかなか整いません。
厚生労働省の情報サイト「e-ヘルスネット」でも、まじめで神経質な人ほどストレスを強く感じやすく、眠れないことにこだわって不眠になりやすいとされています。
抱えこんでいる気持ちや役割を少しずつ下ろしていきたいときは、手放す・手離すとはどういうこと?執着を手放すための方法と、その先に待つ変化も読んでみてください。
カフェイン・お酒・寝る前のスマートフォン
コーヒーや緑茶、エナジードリンクなどに含まれるカフェインには、目をさます働きがあります。
夕方以降は、カフェインの入っていない飲み物を選ぶと安心です。
お酒は寝つきをよくするように感じますが、眠りを浅くし、明け方に目が覚めやすくなります。
寝る直前までスマートフォンやパソコンの画面を見ていると、明るい光と情報の刺激で、頭がさえてしまうことも原因のひとつです。
生活リズムの乱れと寝室の環境
休日の朝寝坊や、夜ふかし、交替制の勤務などで起きる時刻が日によって変わると、体内時計が乱れて、決まった時間に眠くなりにくくなります。
寝室の音や光、暑さ・寒さ、湿度なども、寝つきに影響します。寝室はできるだけ暗く静かにして、季節に合った温度に整えておきましょう。
体の不調や、年齢・ホルモンの変化
体の痛みやかゆみ、夜中のトイレ、せきなどがあると、眠りは妨げられます。
また、年齢を重ねると眠りが浅くなり、夜中や明け方に目が覚めやすくなります。
女性の場合は、更年期のホルモンの変化によるほてりや汗が、眠りに影響することもあります。
体の不調が原因と思われるときは、眠りの工夫だけで解決しようとせず、医療機関に相談することが大切です。
眠れない夜を減らすための日中の習慣
夜の眠りは、実は朝と日中の過ごし方で準備されています。ここでは、寝つきをよくするための日中の習慣を紹介します。
毎朝同じ時刻に起きて、朝の光を浴びる
眠りのリズムを整えるいちばんの方法は、毎朝同じ時刻に起きることです。
起きたらカーテンを開けて朝の光を浴びると、体内時計がリセットされ、夜に自然と眠くなりやすくなります。
前の晩に眠れなかった日も、起きる時刻はできるだけ変えないようにしましょう。
午後に軽く体を動かす
日中に体を動かすと、夜の眠りが深くなりやすくなります。
e-ヘルスネットでは、午後に軽く汗ばむ程度の運動を続けることがすすめられています。
ウォーキングや軽いストレッチなど、無理なく続けられるもので十分です。
寝る直前の激しい運動は、かえって目がさえるので避けましょう。
寝る前の時間を「ゆるめる時間」にする
寝る前は、ぬるめのお風呂にゆっくりつかったり、照明を少し落として静かな音楽を聴いたりして、心と体をゆるめる時間にしてみてください。
寝る直前まで仕事や家事をしていると、頭が切り替わらないまま布団に入ることになります。
「この時間からはゆっくり過ごす」と決めておくと、体も眠りの準備を始めやすくなります。
昼寝は午後3時前に30分以内
昼寝は、午後の眠気をやわらげるのに役立ちます。ただし、長い昼寝や夕方の昼寝は、夜の寝つきを悪くしてしまいます。e-ヘルスネットでは、昼寝は午後3時前に30分以内にとどめることがすすめられています。
病院に相談したほうがいい不眠のサイン
ここまで紹介した方法を試しても眠れない日が続くときは、ひとりで抱えこまないことが大切です。
次のようなサインがあれば、医療機関に相談してみてください。
週3日以上の不眠が3か月以上続いている
厚生労働省のe-ヘルスネット「不眠症」によると、眠れないことと日中の不調が週3日以上あり、それが3か月以上続く場合は、慢性の不眠症とされています。
日中に眠気やだるさ、集中力の低下などが続いて、仕事や家事に支障が出ているときも、相談の目安になります。
かかりつけ医のほか、精神科や心療内科、睡眠の専門外来などで相談できます。
いびき・呼吸の停止・脚のむずむず感がある
家族から大きないびきや、眠っているあいだに呼吸が止まっていると言われた場合は、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。
夜になると脚がむずむずして眠れない場合は、むずむず脚症候群という病気のこともあります。
また、気分の落ち込みが続いて眠れないときは、うつ病などの心の不調が隠れていることもあります。
こうした場合は、眠り方の工夫だけでは改善しにくいので、早めに専門の医療機関を受診しましょう。
よくある質問
Q. 眠れないとき、横になって目を閉じているだけでも体は休まりますか?
A. 横になって目を閉じているだけでも、体はある程度休まります。
ただし、眠れない状態で長く寝床にいると、寝床と「眠れない」がむすびつきやすくなります。
しばらくたっても眠れないときは、いったん寝床を離れて、眠気が来てから戻るのがおすすめです。
Q. 米軍式睡眠法は、本当に2分で眠れますか?
A. 「6週間の練習で96%の人が2分以内に眠れるようになった」と伝えられていますが、科学的な研究で確かめられた数字ではありません。
すぐに効果を感じなくても、体の力を抜く練習として続けてみてください。
くり返すうちに、力を抜く感覚がつかみやすくなります。
Q. 眠れない夜に、スマートフォンを見てもいいですか?
A. 画面の明るい光や、次々に入ってくる情報は、頭をさえさせてしまいます。
眠れないときこそ、スマートフォンは寝床から離れた場所に置いておきましょう。
時間を確かめたくなっても、時計を何度も見ないようにすると、焦りがやわらぎます。
Q. 眠れない次の日は、早めに寝たほうがいいですか?
A. 早く寝床に入りすぎると、かえって眠れない時間が長くなることがあります。
次の日も、いつもと同じ時刻に起きて、眠くなってから寝床に入るようにしましょう。
起きる時刻をそろえることで、眠りのリズムが自然と整っていきます。
まとめ:眠れないときは、焦らず力を抜くことから
この記事について、あらためて整理します。
この記事のまとめ:
- 眠れない夜は誰にでもあり、「眠らなきゃ」と焦るほど目がさえてしまう
- 寝床の中では、米軍式睡眠法・4-7-8呼吸法・筋弛緩法などで、体の力を順番に抜いていく
- それでも寝れないときは、いったん寝床を離れ、薄暗い部屋で静かに過ごす
- 寝つきが悪くなる原因には、ストレス、カフェインやお酒、寝る前のスマートフォン、生活リズムの乱れ、体の不調などがある
- 毎朝同じ時刻に起きて朝の光を浴び、日中に体を動かすことが、眠れない夜を減らす土台になる
- 週3日以上の不眠が3か月以上続くときや、いびき・呼吸の停止があるときは、医療機関に相談する
眠りは、追いかけるほど遠ざかり、力を抜いたときに、そっと訪れてくれるものです。
眠れない夜があっても、自分を責める必要はありません。
今夜は、ゆっくりと息を吐いて、体の力をひとつずつ抜いていくことから始めてみてください。
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